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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「───アレン、やり過ぎである…」

「わかってます…ラビにも言われました」



海に追いやられた団員達を見送りながらクロウリーがぼやけば、アレンの顔も暗くなる。
椛のこととなるとどうにも大人でいられない。
そんな幼稚な自分が嫌になることも多々あるが、簡単に止められるのならばラビやクロウリーにこうして咎められてもいないだろう。



「ごめんねアレンくん。私が悪い、よね…?」



理由は明確ではないだろうが、申し訳なく謝罪してくる椛にアレンは首を横に振った。



「椛は何も悪くないですよ。僕の心が、狭いだけで」

「狭いの?なんで?」

「…椛にいやらしい目を向けられるのが、嫌だから」

「いやらしい?」



きょとん。
そんな効果音を携えて首を傾げる椛に、馬鹿真面目に応えるのは聊か男として恥ずかしい。
しかし椛に非はないのだと伝える為に認めれば、彼女の顔はふにゃりと和らいだ。



「そっかぁ、嬉しいな」



嬉しいと言う言葉は予想外だった。
ぱちりと瞬くアレンの目を見返す椛の笑みに、偽りはない。



「それだけアレンくんが私を見てくれてるってことだよね」



気に掛けてくれてるからこそ生まれる思いならば、嫌なことなど一つもない。
そう笑う椛に、アレンは初めて椛と体を重ねた時のことを思い出した。
あの時も欲塗れで幼稚だと思っていたアレンの思いを、椛はなんでもないことのように受け入れた。
そんなアレンが好きだと言ったのだ。



(本当に、こういうところは敵わないよなぁ…)



椛のその言葉だけで、心の中にある蟠りは嘘のように消えてしまう。



「ね、私達も遊びに行こうアレンくん。折角の海だし、クロウリーさんも一緒に。ねっ」

「わ、私もであるか?」

「勿論。クロウリーも一緒に」



誘う椛にクロウリーが慌ててアレンに目を向ければ、其処には先程のように妬む姿はない。
誘われ差し出される二人の手。
向けてくる笑顔を眩しそうに見つめ、やがてクロウリーも照れた様子で二人へと手を差し出した。



「是非に、である」



握り返された掌は、太陽のように温かく。









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