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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「南」



リーバーの目が浜辺にいた南達にも向くと、ジョニーと慌てて背筋を伸ばす。
例えこの場が娯楽の場でも、一瞬にして職場と化す上司の目だ。



「はい!私も食料調達に…っ」

「いや、お前はこっちの手伝い頼む」

「わ、わかりましたっ」


「あっ南待っ…!」

「あーあ、出遅れたねラビ」

「が、頑張ってラビくん」



手招きするリーバーの所へと慌てて駆ける南に、虚しくラビの伸ばした手が空を切る。
後方で見守る雪と椛の言葉に、がくりと無言で両肩を落とした。



「なんのお手伝いをしたらいいですか?」

「それ」

「?」



それ、と言ってリーバーが目線で促したのは周りにあるバケツや炭の袋ではない。
薄いグレーの彼の視線の先を辿れば、それは南自身の姿だった。
なんのことかと首を傾げれば、軍手で己の後頭部をぐしぐしと掻きながら、リーバーは視線を泳がせる。



「リーバー班長?」

「その…自分で、選んだのか?」

「え?」

「水着」

「ぁ…はい。似合って、ません…?」

「いや」



泳ぐ視線が南へと再度向く。
その表情には、どこか気恥ずかしさが入り混じっているようだ。



「そういうもんは俺も詳しくないが…南らしいと思う。俺は好きかな」

「…ぇ」



思いもかけない言葉に、南の頬がじわりと染まる。
空耳ではない、確かにリーバーの声で好意の言葉を聞いたのだ。



「わー…大分出遅れたねラビ」

「ふ…ファイト!ラビくんっ」



そして撃沈するラビの耳にも。

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