第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ふわー!南!それよく似合ってるよ!」
真っ先に駆け寄ったのは、同期として友人として誰よりも南と職場で連れ添ったジョニー。
レッドとブルーのキャプテン・アメリカ柄の海パンが目に眩しい。
「そ、そう…かな」
「うん!とっても!なぁ皆ーっ」
「まー確かに」
「ジョニーの言う通りではあるなぁ」
「ジョニーのアメコミ海パンよか似合ってんぜ!」
「言えてる!」
わははは!と再び豪快に笑い合う科学班の面々。
いつもの彼らのノリではあったが、容姿を褒められるなどついぞなかった。
それが素直に嬉しかったのだろう、南はぽりぽりと指先で頬を掻きながら俯く。
「…ありがと、」
照れが勝ったのだろう、はっきりとした礼ではなかった。
しかし化粧も身形も整えた南の今の姿は、どこからどう見ても水着姿の女性でしかない。
職場でいつも見掛けていた、くたびれた背中にぼさぼさの髪に連日残業で死んだ目をしている彼女ではないのだ。
パレオを手持ち無沙汰に握りながら、照れ笑う南の姿に一同の目が止まる。
「お、おう…?(あれ?)」
「…なんだこれ…(今キュンとしたぞ)」
「まじかよ…(南が女に見える…)」
当たり前のことなのだが当たり前に職場仲間としてしか見ていなかったからこその衝撃。
青天の霹靂状態の彼らの目は南に釘付けだ。
そこへ突如視界を遮ったのは、もわもわと立ち昇る白い煙。
「お前ら遊んでばっかいないで、食料調達して来い。タダ飯は食えねぇからなー」
「うわっ…げほッ!」
「リーバー班長何し…いや本当何してんスかっ!?」
海パンにパーカーとラフな姿ではあるが、他科学班面子と違うところは、両手の軍手に首にかけたタオル。
淡々とした表情で指示しながらの、手元は炭を重ねたバーベキューコンロ内を団扇で扇ぐ。
ぱたぱたぱたばたばたばたばたばたばた
「目に滲みる!あっつ!」
「そんな高速で仰がないで下さ…!げぇっほ!」
「働かざる者食うべからず」
勢いよく扇がれた煙は一直線に、海で遊ぶ科学班の所へと下っていた。