第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
そんな和気藹々と弾む空気に、しかしラビの目はそわそわと辺りを彷徨っていた。
リナリーの水着姿が見られたのならば、彼女の姿もあるはず。
隻眼であるが誰よりも観察力の長けた翡翠色の目が、人集りから外れた場所に設置されたパラソルを見つけ出した。
「うわー…やっぱりリナリーは教団のアイドルだね。特に科学班の。皆鼻の下伸ばしてるよ、南」
「いつもの光景。だってリナリー可愛いし。あんな水着姿見たら尚更でしょ」
「うん。言えてる」
「そんなことないよ。南さんも雪ちゃんも可愛いよ〜」
「「………」」
「な、何?」
「うん。椛が一番可愛い」
「間違いなく椛が一番」
「ええ…っ」
「南みーっけ!」
「「「!」」」
パラソルの日陰が覆うビニールシートの上で、まったりと寛ぐ三つの影。
皆の所へ向かおうとしない彼女達の中にこそ捜していた南の姿を見つけ、ラビは嬉々として歩み寄った。
彼女こそ待ち望んでいた者なのだ、逃さないようにと細い手首を掴む。
「何してんさ、そんな所で。出て来いよ待ってんだから」
「え、いや。私はいいよ。若者同士で遊んできたら」
「何言ってんさ、南だって若いって言ってんだろ。年下扱いすんなさっ」
「し、してないよ。というかリナリーの後に出たくない月とスッポンだから。私は遠慮しますっ」
「オレが遠慮できねぇのッ雪もなんか言ってやれって!」
「そうだねー、私ならリナリーと雲泥の差ってとこかな」
「表現の問題じゃねぇから!此処まで来たってのに今更尻込みすんな、よッ!」
「わわ…!」
ラビの力の前では、南の力などそれこそ雲泥の差。
腕を引かれると、あっという間にパラソルの下から引き摺り出されてしまった。