第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
✣
「───…」
目覚めは、羽毛に包まれるように、優しく訪れた。
重くはない。
自然と開眼する瞼を開けば、白いシーツが目に映る。
カーテンの隙間から差し込む朝日が零れ落ちて、僕の目の前の景色を照らしていた。
「…ん…」
柔らかい、優しい冬の朝日に照らされているのは、未だ眠りにつく椛の寝顔だった。
僕と同じ布団に包まって、すやすやとこちらを見て寝入っている可愛い顔。
いつもはセットされてる髪が、少し乱れたように目元に落ちている。
布団からはみ出した肩は、何も身に纏っていない肌の色。
そんな些細なことで、僕の胸は満ち足りた。
昨夜、椛とひとつになれたことは夢じゃないんだって。
…夢になんかさせる訳ないけど。
記憶にはしっかり焼き付けてる。
僕の腕の中で愛らしい姿を沢山見せてくれた、椛のことは全部。
「…っ…」
思い出すとなんだかまた体が熱くなりそうで、つい枕に顔を埋めた。
だって全部初めて見たものだから、慣れないのは仕方ない。
…照れるなぁ…でも、それ以上に嬉しくて仕方がないけど。
昨夜、体を繋げても間抜けな姿を晒してしまった僕に、椛はもう一度チャンスをくれた。
だから二度目は、凄く凄く優しく抱いた。
一度目よりも、しっかりと椛の声を拾って。
一度目よりも、しっかりと椛の表情を見て。
一緒に熱の高ぶりを感じていくのは、凄く気持ちがよかった。
「………癖になりそうかも」
情けないけど、本音だから仕方ない。
欲望だらけの男になんかなりたくないけど、椛に対しては元から欲だらけだったから今更だ。
あんな椛の姿を見てしまったら、何度だって見たくなる。
もっと、感じていたくなる。
本当、椛に対する想いは尽きることがないなぁ。
「んん…」
「!」
僕の声か気配か、気付いた椛が微かに身を捩る。
顔を枕から上げれば、瞑っていた両の瞳がゆっくりと開くのが見えた。
椛の瞳に、僕が映り込む。
椛の世界に、僕が入り込む。
僕の好きな、瞬間だ。