第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「折角のクリスマスなんだから。あんまり怒ったラビの顔は見たくないな」
「………ん」
自然と顔が熱くなる。
言葉は詰めたまま、ラビは声に出さずに呑み込んだ。
目の前で、心から笑う南がそう言っているのだから。
それだけで全てがどうでもよくなってしまった。
ティムキャンピーへの怒りも。
間抜けな一面を見られた恥も。
彼女が特別な日だと笑うなら、全て呑み込んでしまおう。
「じゃあ此処片付けたらシャワー浴びて、それからフェイさんの所ね」
「なんで補佐官なんさ?」
「駄目にした本の在庫、頼まないと」
「げぇ…絶対そこで怒られるって」
「わかってるよ。私も一緒に謝るから。ね?」
「…絶対だかんな」
「うん」
繋いだ手を緩く握っていた大きなラビの手が、僅かばかり握りこんでくる。
優しいが確かな抱擁感に、南は少しばかりはにかんだ。
じわりと灯る彼の熱は、じわりと彼女にも伝染して。
書庫室の一角で繋がる手と手を見守っていたのもまた、金色のゴーレムただ一つ。