第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「………」
「……っ」
「………」
「…~…っぶふふ…ッ!」
「…………ォィ」
「あっははは!ラビ何それ…っコントみたい…ッ」
「誰も好き好んでやってねっての…んぐ」
「あははははは!」
「オイて」
のそりと体を起こしたラビが振り返れば、目の前には腹を抱えて爆笑する南の姿。
流石にカチンと堪忍袋を震わせるラビに、それでも南の笑い声は耐えなかった。
何故なら顔一面を真っ白なクリームだらけに塗り潰したラビが、其処にいるのだ。
どこぞの芸人のような様に、なんだか似合っているような気もするから可笑しくて仕方ない。
「あんにゃろっ其処でじっとしてろ、今すぐ捕まえてやる!」
「はは…っまぁまぁ。お、落ち着いて」
高い書庫室の天井近くに逃げたティムキャンピー目掛けて中指を立てるラビに、笑い耐えながら南がセーブするようにその手を取る。
しかしラビの表情は一向に晴れなかった。
「落ち着くのは南の方だろ。笑うのやめねぇなら、いい加減オレも怒っていいさ?」
「でも悪いことしたのはラビでしょ?」
「……ぅ」
「失態を揉み消そうとしたから、罰が当たったんだよ。ティムは悪くないから」
「………」
「ほら、こっち向いて。顔拭いてあげるから」
「…ん」
南が優しく促せば、渋々とも顔を寄せるラビ。
高い背を屈めるように背を丸める姿は、なんとも名前の通りの大きな兎のようにも見えて、なんだか愛らしくも見える。
爆笑の笑みとは違う、自然と綻ぶ口元を緩ませながら南は微笑んだ。
「私も一緒に怒られるから、さ。管理班に謝ろう?」
「でも南に責任はねぇさ」
「あるよ、この場に一緒にいたんだから。クリスマスに残業、付き合ってくれたしね」
所持していたハンカチで顔の生クリームを拭っていく南に、視界を開けさせながらラビは僅かに溜息をついた。
「本当、仕事で一日潰れるとか…流石科学班」
「オマケにコントなラビも見られたしね」
「オイってだから」
「ふふ。そう嫌な顔しないでよ。お陰で私には忘れられないクリスマスになったし」
「クリスマスって、もう日付は越えてますけど?南さん」
「あれ、知らないの?ラビ」
「? 何が」