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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】



「どうしたの?」

「や…本が…」

「?」



固まったラビの背を不思議そうに見つめる南に、しかし彼の隻眼は目の前の本を凝視したまま。
そこにはべっとりと、本一面を隠す程の大量の生クリームが夥しく付いていた。



(そういやケーキの存在忘れてたさ…!)



こんな雪崩の中でケーキだけが無事なことなどあり得ない。
見事に本の群に潰されてしまったらしい。



「うわ…これは……管理班に見つかったら絶対大目玉だね…」

「……見てないさ」

「え?」

「オレも南も何も見なかった」

「は?」

「ヨシ。そういうことで」

「いやいやヨシじゃない。そこまで見事にクリーム塗れなのに、なかったことになんてできないでしょ」

「火判、」

「いやいや火判じゃない火判じゃ!何証拠隠滅しようとしてんの!」



淡々と言霊を口にしながら鉄槌を巨大化させようとするラビの腕に、慌てて南がしがみつく。



「やめてラビ!それこそバレたら雷落ちる!」

「大丈夫さ南、灰の一つだって残さねぇから」

「それ全然大丈夫じゃない!」



やんややんやと繰り広げられる会話のキャッチボール。
というより主に南の豪速球。
それを止めたのは、



「ガァアッ!」

「イデデデ!?!!!」

「ティムっ!?」



ラビの頭をクッション代わりにしていた、金色のゴーレムだった。
ガブリと鋭い牙で耳に噛み付くティムキャンピーに、忽ちラビの手が鉄槌と本を放る。
その手で金色の長い尻尾を掴み引っ張るも、まるで吸盤で吸い付く蛸のように離れやしない。



「み、耳ッ耳が千切れる…!」



ギリギリと限界まで引っ張るラビに、ゴムのように伸びに伸びたティムの球体。
が、限界を迎えた。



バチンッ!



まるでゴムバンドの如く。
これ以上は伸びないとラビの手から滑り出たティムの体が、引っ張られた反動でラビの顔面に正面衝突。



「ゲぶッ!?!!!」

「あ。」



そのままラビの体は、勢い良く顔面から床とこんにちは。
更には其処に放って落ちた、クリームだらけの本がベストポジションを狙うかの如く落ちていたから堪らない。
クリームに正面衝突したラビの顔が、べちゃりと埋まる。



「………」

「………」



そして静寂。

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