第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「本の雪崩から助けてくれたんでしょ?悪いところなんて…」
「それは流れと言うか…つーかそれ、あいつの所為でもあるから」
「あいつ?」
一瞬のことだったが、記憶力の強いラビの頭はしっかりと刻み込んでいたらしい。
ジト目で見上げた隻眼に釣られて顔を上げた南の目に、頭上を飛ぶ金色の丸い球体が見えた。
「あれ?ティムキャンピー?」
「あいつが急に現れるから驚いてさー…アレンの気配はしなかったから、全然気付かなかった」
「じゃあ書庫にいるのはティムだけ?おーい、ティムー」
口元に両手を当てて南が呼び掛ければ、天井近くを旋回していたティムキャンピーが軽い身のこなしで下りてくる。
ぽふりと着地したのは、鮮やかなラビの頭の上。
「ガァッ」
「オイ」
「おはよう、ティム。朝の散歩?」
「ガゥッ」
「アレンは?ティム一人なの?」
「ガァアッ」
「うーん…いないみたいだね」
「オイて。オレ無視?」
我が物顔(そもそもティムキャンピーに顔があるかも定かではないが)の雰囲気を醸し出し、譲らない小さなゴーレムに結局折れたのはラビの方だった。
アレンに見られなかっただけ良しとしようと、脱力気味に肩を落とす。
「とりあえず、これ片付けねぇと…管理班に見つかったら100%説教喰らうさ」
「あちゃ…そだね。高く積み上げすぎた…」
「大体この本全部一晩で目を通すって方が無茶だから。オレだって一気にこんな量記録しねぇよ」
「そうなの?ラビならいけそうな気するけど」
「ムリムリ。自分の限界くらい知ってるし、だから南も限界を悟れよな。結局寝落ちてただろ」
「うん………結局半分も、目を通せなかった…」
「いやそこに落ち込むんじゃなくて自覚しろって。ムリだってこの量は」
誰もいない静かな書庫室で、やんやと会話を投げ合いながら散乱した本を片付けていく。
ガクリと意気消沈する南に、目を止めるとこが違うと溜息混じりに突っ込みながら、ラビは目の前の本を持ち上げた。
と、
「ん?」
ぼと、と何かが本の内側から滴り落ちる。
何かと掴んでいた背表紙を引っくり返せば、
「げッ」
本日二度目の短い悲鳴をラビは上げた。