第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「凄く上手ですね」
「そんなことないよ、少し糸ほつれちゃってるし…」
「そこがいいんじゃないですか」
「え?」
受け取った手袋を大事に握る。
「人の手が加わっている感じが、温かみあるというか…世界に一つだけって感じがするし。特別感、あります」
にっこりと笑って返せば、リナリーの顔が…あ、少し赤くなった。
「…そう? アレン君がそう言うなら…いいけど…」
そんな顔を隠すように俯いて、握った両手を胸に当てる。
…なんだろうこの可愛い生き物。
アレンの前ではよくこんな感じなのかな、リナリー。
私やラビの前では、時々凄く怖…げふげふ。
いいえ、強くて可愛い美少女です。
「大事に使いますね」
「うん」
そんなアレン限定リナリーは誰が見たって可憐で可愛い女の子。
ついつい笑顔が漏れれば、赤みを残したまま嬉しそうに笑ってリナリーは頷いた。
ほんと、可愛いなぁ。
「なんか…普段のアレンに更に甘さに磨きかかった感じさな…」
「なんだか違う自分を見ているようでした…」
科学班の給仕に行くから、と。まだちょっと照れた顔で去っていくリナリーを笑顔で見送っていると、後ろからそんな会話が届いた。
振り返れば、感心したように見てくるラビとアレン。
何、甘さって。
アレンと同じようなこと言っただけだけど。
「いいえ、僕でもスラスラとそんな言葉出てきませんよ」
「雪が男だったら、無意識の女タラシさ。きっと」
あ、また心の声漏れてた。
てか女タラシって何。
ラビに言われたくありません。