第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「てか入れ替わっゴぶほッ!?」
真相を語ろうとしたラビの言葉を止めたのは、目にも止まらぬ速さで繰り出されたアレンの肘打ちだった。
うわ…あれは痛い。
「ゲホッ…何するんさアレ」
「しっ! 黙って下さい。もう忘れたんですか」
背後でコソコソとラビを詰るアレンのその言葉に、数十分前のことを思い出す。
『いいかい? 絶対に周りにはこのことは内緒だからね。リーバーくんとリナリーには特に! 絶対に言っちゃ駄目だからね!』
『…それって私達に相手に成りすませってことですか』
『なんでそんなこと──』
『バラしたら一ヶ月はそのままだから、二人共』
『ええ!?』
『なんですかその横暴さ!?』
リーバーさんのお叱りやリナリーの呆れた顔を向けられるのが嫌なんだろうけど。
そんなコムイ室長の要求は本当に横暴なものだった。
横暴だけど、一ヶ月もこのままなんて色々と不都合があり過ぎる。
だからアレンもバラそうとしたラビの口を塞いだんだろう。
「それで、その手袋がどうかしたんですか?」
とりあえず変に疑われる前に撤退。長居は無用。
早々と会話を切り上げようと、アレンのフリをしたままリナリーに本題を問いかける。
「うん…あれ、半分は私の所為だったし…だから手直し、してみたの」
照れたように、視線を伏せがちにリナリーが差し出したもの。それはアレンの戦闘時に身につける手袋だった。
ぱっと見、どこが破けてしまったのかわからないくらいに綺麗に手直しされている手袋。
よくよく見れば糸が少しほつれた箇所が見えた。ここが破けちゃってたのかな。
…というか、
「ありがとう、リナリー」
いじらしいなぁ、リナリー。
リナリーのアレンへの想いを知ってしまっていたからこそ、照れた様子で差し出してくるその姿にきゅんとくる。
ええ、胸きゅんしましたよ。
なんですかこの女の子可愛い。