第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
✣✣✣✣✣✣
シンと静まり返る冬の朝。
降り積もった雪で銀世界へと変わった世界を、泳ぐように飛ぶ金色のゴーレムが一匹。
友の為にと席を空けたティムキャンピーは、教団の城のような外観に沿って飛んでいた。
パタパタと鳴る羽音以外は何も聞こえない。
ゆっくりと近付いてきてはいるが、まだ姿を見せていない朝日に辺りは薄暗い。
しかしティムキャンピーの持ってした探知能力か、単なる偶然か。
こつんと丸いボディがぶつかった冷たい窓硝子の向こう側で、確かに人影は動いた。
『あれ…もしかして、ティムキャンピー?』
窓硝子の向こうから呼びかけてきた高い声が、ゴーレムを呼ぶ。
応えるようにこんこんとボディでノックを鳴らせば、やがて窓はガチャリと重い鍵を開けた。
「やっぱり。どうしたの、こんな朝方にこんな所で」
窓の隙間から舞い込む、冷たい風と凍えたゴーレム。
おいでと手招きする手に誘われるように着地すれば、ふるりと目の前の人物は肩を竦めた。
「冷たっ随分前から外にいたの?」
「ガァア」
「…うん。相変わらずさっぱり」
この獣のような鳴き声を理解できるのは、主人であるクロスと友であるアレン以外にはいない。
自分には無理だと苦笑する人物に、それでも構わずティムキャンピーは己を主張した。
「ガァッ」
「うん、はいはい。とりあえず中であったまろう。寒いからね」
ひゅうひゅうと入り込む冬風を遮断するように、再び窓が締め切られる。
然程使われた様子のない鍵が再び閉められれば、部屋は静寂を取り戻した。
「おい」
静寂に響くは低い声。
「なんでモヤシのゴーレムが此処にいるんだよ」
ティムキャンピーが目にしたのは、ベッドの上で布団を掛けたまま座る半裸の青年だった。
アレンをモヤシと呼ぶ者など、教団には一人しかいない。
いつもは一つに結ばれた黒い長髪をゆたりとシーツに落とした青年は、エクソシストが一人。
「クロス元帥のゴーレム、ね。だからティムを見る度顰めっ面をするのは止めよう、ユウ」
神田ユウである。
ティムキャンピーを片手に肩を落とすのは、彼の物であろうシャツを下着の上に羽織っただけの月城雪。
どうやら此処は彼らの部屋であったらしい。