第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「二人で初めてのことだから…優しくしたかったのに…」
「………」
優しかったよ、と言うのは簡単だけれど。
それは確かな私の本音でもあったけど。
凄く落ち込んだ様子でアレンくんが言うものだから。
「……じゃあ、」
伸びた私の二つの腕は、目の前の白い体を捕まえた。
絶頂の余韻は落ち着いたけど、まだ体は火照ってる。
…まだ、この熱を冷ましたくない。
「椛?」
腕で絡めた背中を引き寄せれば、ぐっと近付く距離。
大人しく従いつつも不思議な顔で見下ろしてくるアレンくんの銀灰色の目の奥を、じっと見つめた。
その瞳の奥にはまだ、微かな炎が残ってる。
そんな気がして。
「…今度は優しくしてくれたら、いいよ」
駄目だったと思うなら、次、挑戦してみればいいことでしょ?
その次をわざわざ次回に回す必要も…ないでしょ?
流石にまたシようなんてはっきり云うのは恥ずかしくて、曖昧にだけど伝えてみた。
私の、心が欲してるもの。
私はまだアレンくんに触れていたいし、アレンくんにも触れていて欲しい。
そして我儘が許されるなら、まだ…感じ合っていたいなぁ…なんて。
「それじゃ、駄目?」
自分でも顔が赤いのがわかる。
それでもアレンくんから目を逸らさずに告げれば、綺麗な銀灰色の二つの目が大きく見開いた。
見開いて、魅入られて。
見えたのは、欲の炎。
「…駄目じゃない」
ほんのりと顔を赤らめながらも、アレンくんは戸惑いを見せなかった。
お互いの間にあった僅かな距離を縮めて、触れ合う唇。
一度、二度と優しいキスが舞い降りて。
「…ん…っ」
そこに熱が灯るのは、数秒とかからなかった。