第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「元気出せよ、二人共。一生そのままじゃねぇだろうしさ」
原因の解明をしたいと言うコムイ室長に、半ば放り出されるように実験室から追い出された。
トボトボと広い廊下を肩を落として歩く私とアレンに、ラビが苦笑混じりに励ましてくる。
寧ろ一生このままじゃ困ります。
「というかそのままだと私が困ります」
そう心の中でツッコめば、全く同じことをリンクさんが口にした。
そうだよね、リンクさんの仕事はアレンの監視だから──…ってちょっと待って。
「この場合って、リンクさんはどっちの監視をするんですか?」
ふと抱いた疑問。
リンクさんの仕事はアレンの監視。
だけどそのアレンの中身は、今は私になってしまった。
この場合やっぱりアレンの監視だから、外見が私でも中身がアレンの傍に付くのかな?
「……」
あ、考え込んでる。
アレンの体の方も無視できないのかな…割と難しい問題なのかも。
「駄目ですよリンクっいくら僕の体でも、中身は雪さんなんですから。一日中雪さんの傍にくっ付くなんて──」
「いた、アレン君っ」
慌てて忠告するアレンの言葉を遮ったのは、高いソプラノの可憐な声。
「はい?」
振り返ってみえたのは、軽やかに小走りに駆けてくる美少女。リナリーだった。
「よかった、丁度捜してたの。前の任務で戦闘時にアレン君、手袋破いちゃったでしょ?」
「そういえば…そんなことありましたね」
「……なんで雪が知ってるの?」
あ。まずい。
見た目は私でも中身はアレンだから、つい当たり前に二人のやりとりを傍観してたけど。
私達が入れ替わってることを知ってるのは被害者の私とアレンを除けば、コムイ室長とラビとリンクさんだけ。
何も知らないリナリーにすれば、アレンに話しかけてるのに私が受け答えするのは可笑しく見えて当たり前だ。
きょとんと不思議そうに私(中身はアレン)を見るリナリーに、つい冷や汗が浮かぶ。
「ごめんリナリーっわた…僕が話したんです。雪…さんに」
「え? そうなんだ」
咄嗟に一歩踏み出してリナリーの前に出る。
なんとかアレンのフリして笑顔を浮かべれば、すんなりとリナリーは納得してくれた。