第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「と、兎に角綺麗にしないと…汚してしまってごめん」
「ううん」
"汚れた"だなんて思ってないのに、なんでそんなに申し訳なさそうな顔をするんだろう。
そっちの方が私は不思議で仕方なかった。
「アレンくんのものだもん。汚いなんて思わないし、ちょっぴり…恥ずかしいけど。嫌じゃないよ」
なんて言えば、変態っぽいかなぁ。
でも本当のことだから、否定なんてしない。
初めてアレンくん色に染めてもらったんだから。
私には凄く意味のある、特別なことなの。
「っ…」
そう笑いかければ、見下ろすアレンくんの唇がきゅっと噛み締められて。
「あー、もう…」
「?」
何か言いたげな言葉を辿々しく紡ぎながら、頭はへなりと私の肩に触れた。
どうしたんだろう?
「本当、椛には敵わない気がする…」
「何が?」
「…僕がどんなに情けなくたって、全部受け入れてくれるような」
「?」
それのどこがおかしいの?
好きな人だもん、受け入れるよ。
アレンくんにとっては情けなくたって、私にとっては一生懸命頑張ってくれてる嬉しい姿だから。
「でもッやっぱりその体は綺麗にしないと!僕が見てられない」
弱々しく肩に乗っていた顔がパッと上がったかと思うと、強く頭を振られる。
なんだろう、忙しないなぁ。
色んな感情が行き交ってるのかな?
「ごめん椛」
「だから謝らなくても…」
「ううん。そのことだけじゃなくて…ちゃんとゴムくらい、用意、してたのに。頭の中、椛でいっぱいになって…忘れてた…」
あ、そうなんだ。
ぽそぽそと小さな声で照れたように告げるアレンくんは、やっぱり優しい人だった。
凄く肩を落として凹んでるみたいだけど…そんなに凹むことかなぁ。
アレンくんは元から努力家な男の子だけど…そういう背伸びする姿が、人一倍強いのかもしれない。
それはアレンくんの性格そのものや、生きてきた環境や、エクソシストという立場がそうさせるのかもしれないけど。
今日、沢山彼と本音を混じえて感じたこと。
もしかしたらアレンくんなりに、リードしたかったのかも。
いつもどんな時でもエスコートしてくれる、そんな彼だから。