第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「も、きちゃ…ぅ…っ」
下半身を支配していた快感が、ぶわっと全身に波を起こすように降りかかる。
その大きな波に逆らうことなんてできずに、堪らず歯を食い縛った。
「んン…ッ!」
握り締めたシーツに顔を寄せて、噛み締めた唇から零れるくぐもった声。
波に攫われた体がびくびくと戦慄く。
…アレンくんの手で、舌で、私いっちゃった…。
脱力する体に、息が上がって胸の鼓動が弾む。
体が熱い。
「はぁ……アレンくん…?」
息を繋いでいれば、視界に被さる影。
見上げれば、じっと視線を向けてくる綺麗な瞳と目が合った。
いつ体を起こしてたんだろう。
私の中にいたアレンくんの指の存在も消えてる。
自分のことにいっぱいいっぱいで、気付かなかった。
見下ろしてくるアレンくんは、よく見る笑顔は浮かべていなかった。
なんだか熱っぽい顔で、じっと私の様子を見つめてる。
「…椛…かわいい」
やがて憂いも混じるような声でアレンくんが呟いたのは、よく聞いていたはずなのに初めて聞く言葉だった。
そんな熱のこもった目で、そんな憂いある吐息混じりに、そんなこと言われたことないから。
顔が益々熱くなる。
「気持ちよくなってる椛の顔、凄く可愛いです」
「ゃ…あんまり、見ないで…」
「無理だよ。だって目が離せない」
そんな大真面目な顔で言わないで…は、恥ずかしい…。
アレンくんの愛の言葉にはもう慣れてたと思ってたのに、これは簡単には慣れそうになかった。
男の子なのに凄く"男"なアレンくんに、私の方が目が離せなくなりそう。
「ちゃんとイけた?気持ちよくなれましたか」
「うん…」
こくりと頷けば、ほっとしたようにアレンくんの顔が傍に落ちてくる。
「よかった」
本当にほっとした顔で、汗が滲んだ私の額に優しいキスを落として。
なんだかベッドで二人して目覚めた時のいつものアレンくんと重なって、私も少しほっとした。
…けれど。
「じゃあもっと見せて下さい。椛の気持ちよくなってる姿」
微笑んでいたけれど、熱を帯びる瞳は変わらないまま。
「あ、アレンくん…」
「いい?」
「ぇ、ぁ…っ」
被さる体に、止める術はなかった。