第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
──現在
「……」
そうだ、思い出した。
室長の暴挙とその末に意識を飛ばした自分。
思わず額に手を当てて俯く。
でもだからって、なんでこんな可笑しな事態になってるんですか。
「いやウン、だからね。エクソシスト用に作ったものだったから、普通の人間には対応してなかったみたいで」
「…で?」
「変な磁場が生じたみたいで、その結果腕輪で繋がってる二人の精神が入れ替わっちゃった…みたいな?」
何その映画とかで何度もやってそうなネタ。
何番煎じですか。面白味ないですよ。
「…で?」
「いや、その…」
「で?」
「…雪くん、怖い」
「黒アレンみたいさね…」
「僕は雪さんの気持ちに激しく同意ですけど」
現在身を置いている此処はどうやらコムイ室長の実験室らしく、気を失っている間に運ばれたらしい。
其処にいるのは諸悪の根源、コムイ室長の他にその場に居合わせていたラビと、同じ被害者であるアレンと、その監視役のリンクさん。
ざっと説明されたあまりな内容に額を押さえたまま先を促せば、両手の人差し指をつんつんとつつきながら、室長は僅かに後退った。
「この失態は上へ報告し」
「失態じゃないよ! これは事故! 単なる事故だから!」
呆れるアレンの隣でぼそりと呟くリンクさんの言葉を、室長が慌てて張り上げた声で遮る。
こんな馬鹿げた失態、上のお偉いさんの耳になんか入れたくないよね。
その気持ちはわかる。
わかるからお願いだから変なことしないで下さい、いつもいつも。
「それで、元に戻るんですか」
「ええっと……多分?」
「多分っ!?」
テヘ、と首を傾げてのたまう室長に、思わずガバリと顔が上がる。
そこが一番大事なのに!
「いやー、なんせ試作品だからさー。このまま腕輪外して元に戻るかもわかんないし。ちょっと色々調べてみないと、すぐには結果は出ないというか」
「ってことは、つまり…」
「…僕達、暫くこのままなんですか…?」
顔を青くして呟くアレンに、コムイ室長は困ったように眉を寄せたものの。
「うん、ゴメンネ」
あっさりとそう言い切った。
…暴挙にも程がある。