第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「だから…僕に椛を下さい。心だけじゃなく椛の体も、全部」
本当は、ずっとずっと欲してた。
ずっとずっと抱えていた欲は、堰を切るともう止めようがない。
「ぜんぶ、ください。椛を余す所なく…僕のものに、したい」
やっぱり幼稚で無様だ。
それでも止めようのない僕の言葉を、じっと静かに聞いていた椛は。
「…うん───…アレンくんのものに、して」
凄く綺麗な表情(かお)で、微笑んでくれたんだ。
僕の箍を外すには充分過ぎる程の、言葉を添えて。
ジリリリリリッ!
「あーッ!!!!!」
「!?!!」
そんな甘い雰囲気を突如壊したのは、傍らにいたティムから鳴り響くアラーム音だった。
それと椛の絶叫。
え、え、何?
なんですか!?
「ひ、日付が…!」
「日付?」
「クリスマスが終わっちゃった…!」
今にも泣き出しそうな声で椛が抱いたティムの頭をぽむりと押せば、途端にアラームは止まった。
わー…いつの間にそんなセットしてたんだろ…僕よりティムの機能熟知してないかな、椛。
でも納得した。
つまりは0時を示すアラーム音だったってことか。
………。
……なんで?
「あの…椛?なんでそんなに落ち込んでるんですか…?」
「だって…だってぇ…!」
「あ、わ、な、泣かないでっちゃんと話聞きますから…!」
再びぼろぼろと大量の涙を零しそうになる椛に、今度はすんなりと手は伸びた。
落ち着かせるように背中を撫でながら、笑顔を返す。
「0時に何か予定でも?」
「ううん…アレンくんといるのに、他の予定なんて要れないよ…」
だよなぁ…ちょっとほっとした。
「アレンくんが、誕生日に私が欲しいって言ったから…ちゃんとクリスマスのうちに素敵な夜にできるようにって…ティムにサイン、出してもらうように頼んでおいたの……まさかこんな大きなアラーム出してくるとは思ってなかったけど…」
あ、熟知してはいなかったんだ。
ちょっとほっとした。