第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「どんな顔してても、どんな話を聞いても、やっぱりアレンくんはアレンくんだよ」
間近で見つめてくる椛の目が、優しく細まる。
「何も変わらない。私の大好きなアレンくんだった」
微笑み一つ。
告げられた真っ直ぐな、それこそ告白のような言葉に鼓動が跳ねた。
「だから隠さないで。私は、背伸びしてくれるアレンくんも、弱音を吐いてくれるアレンくんも、好きだから。どんな姿だって、変わりない」
「でも…情けなくないですか?幻滅、しません?」
「しないよ。一緒に教団で生きたいって想えた人なんだよ?それくらいで簡単にこの想いは崩れたりしないんだから」
嗚呼、本当。
椛の持つ柔らかい心の芯に、包まれているような。
椛の温かさが流れ込んできて、僕自身も呑まれていくような。
強い意志を持ってるのに、優しく寄り添ってくれる。
椛が持っている凄い所だ。
「だから…アレンくんの、そういう…男の子らしい顔だって、すき、だよ」
不意に椛の声が萎まる。
ぽそりぽそりと小さな声で伝えながら、恥ずかしそうに目を伏せる。
そんな仕草でそんな言葉をそんな距離で、好きな人に伝えられたら。
「話してくれてありがとう、アレンくん」
ざわざわと胸の奥底から上がってくる感情に、言い訳はできそうになかった。
これは間違いなく、椛への欲だ。
「…こんな僕でも、いいですか?」
頬に触れていた椛の両手を離させ、手を握る。
指を絡めながら椛の額に僕の額を重ねれば、近過ぎてピントの合わない彼女の表情はよく見えないのに。
感じる吐息や体温に、余計に欲は増した。
…もっと、触れたい。
「こんなアレンくんだから、いいの」
全てを受け入れてくれる椛の言葉に、許しを得たような気がした。
僅かな距離を縮めて、そっと柔らかい唇に触れる。
いつもしているような軽いキスなのに。
なんだかいつもと違うキスのようにも感じた。
熱を、帯びるような。