第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「アレンくんが浅ましい、なんて…そんなことないよ」
やっぱり。
椛は当たり前のように否定するけど、それは君の知ってる僕じゃない。
「…僕が初めて椛を抱きたいと思ったのは、いつの日だと思いますか」
「え?…そ、そんなのわからないよ…」
「初めて僕に心を打ち明けてくれた、あの日です」
"わ、わ、私…っアレンくんのことが、好き、です…っ"
凄く緊張していたんだろうな。
真っ赤な顔で、真っ白になるまで強く指先を握り締めて、おどおどと震える声で告げてきてくれた。
照れながらも、でも真っ直ぐに見つめてくる二つの透き通るような眼に捕えられて。
一瞬、世界が止まったように感じたんだ。
「あの日、一度椛の想いを断ったけど……本当は、できることならすぐにでも椛を自分のものにしてしまいたかった」
ずっと奥底に在った想いを、ひとつひとつ吐き出していく。
強く掻き抱いた椛の顔は見えなかったけど、感じる空気で戸惑っているのは伝わってきた。
あの日。
エクソシストという立場で僕が拒んだ想いを、椛はあっさりと跳び越えた。
なんでもないことのように、僕が作っていた壁を、君は簡単に崩したんだ。
"私が自分で決めた生きる場所だから。其処でアレンくんを好きになっただけ"
誰でもよかった訳じゃない。
椛がくれた言葉だったから、僕の目の前は拓けたんだ。