第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「アレンくんの好きな所はね…」
顎に指先を当てて考える。
えっと…
「まず、とっても優しい所」
それは私だけにじゃなく、周りの人達に対してもそう。
人間にだけじゃなく、AKUMAやノアに対してだって、見る目も聞く耳もちゃんと持っている。
敵と判断するや否や、攻撃態勢に入る神田くんとは大違い。
「それに…強い所なんかも、そう」
未成年にして、イノセンスとの同調が100%を超えた臨界者。
そんなアレンくんは確かな腕を持っているけれど、決して自慢したり見せびらかしたりしない。
いつも謙虚で、紳士的。
「あと、中身だけじゃなくて。アレンくんの姿も好き。その真っ白な髪や、綺麗な色の瞳も」
一見すると儚い印象に見えるけれど、その体と心の奥底には強い芯がある。
それでも太陽の光に透ける白い髪や、鮮やかなペンタクルが走る綺麗な銀灰色の瞳もアレンくんを素敵に形作ってるものの一つ。
挙げればキリがない。
アレンくんの好きな所、まだまだある。
一つ一つ指折り数えながら挙げていけば、アレンくんはじっと静かに耳を傾けていた。
だけど様子を伺おうと視線を上げれば、合わさった綺麗な銀灰色の目は──…あ。
笑った。
でも、少し儚い笑い方。
「椛」
「なぁに?」
「僕は…まず、そんなに優しい人間じゃない」
「え…?」
指折り数えていた手が止まる。
「優しく在るのは、僕がそうしたい人の前でだけです。平和を乱したり椛を悲しませたりする人には冷たいですよ」
「でも…アレンくんは、AKUMAの為にって戦える人で──」
「それも僕の自己満です。僕にはAKUMAに内蔵された、苦しんでいる人の魂が見えるから…それを見たくないだけなんだ」
唯一触れている、繋がっている結ばれたアレンくんの手。
そこに僅かに力がこもるのがわかった。