第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
暫くティムと向き合っていたかと思えば、不意にアレンくんの顔が上がって目が合った。
体の向きも変えて傍に寄るアレンくんに、変にそわそわし出す。
「椛」
「う、うん…ティムとの話、終わった?」
「はい…駄目出し、貰っちゃいました」
眉尻を下げて、申し訳なさそうに微かな笑みを一つ。
駄目出しって、どんなこと言われたんだろう。
「ごめんなさい。泣かせるつもりはなかったのに」
「ぅ、ううんっこれは私が勝手に…っアレンくんは悪くないから…っ」
「それでも、僕が僕を許せない」
いつも身に着けている真っ白な手袋。
それをしていない白い綺麗なアレンくんの右手が、そっと私の目元に触れた。
「…大人になろうと思ったんです」
おと…な?
指先で優しく私の涙粒を救いながら、ぽつりとミアが囁いた。
「椛は…ずっと前から僕のこと、見てくれてたって。好きだったって、そう言ってくれましたよね」
「…うん」
初めてアレンくんに想いを告げた日。
確かに、そんなことを口にした。
「椛は、いつだってどんな時だって、僕のことを…好きだって。想いを見せて、言葉にしてくれる」
さっきの街中でも、と続けるアレンくんに、少し顔が熱くなる。
つい考え込んでしまう癖があるから、周りが見えなくなることも時々あって…つい、口走ってしまうというか。
凄く恥ずかしいんだけど、どうやらアレンくんはそんな私の癖を嫌ってはないみたいだった。
…よかった。
「だから、その想いに見合う男になろうと思ったんです」
「見合う…?」
「特に、今日という日には」
想いに見合うって、どんなこと?
わからず首を傾げれば、アレンくんは言い難そうに視線を僅かに逸らした。
「椛は、僕の…どんな所が好きですか?」
え?
「ど、どんなって…」
「教えて下さい」
改めて聞かれると照れるんだけれど…っ
でもあたふたと躓く私に、アレンくんは折れる様子を見せなかった。
うう…恥ずかしいなぁ。
でもこれ、伝えなきゃ駄目な雰囲気だよね…?