第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「………」
沈黙ができる。
間接的だけど、意味は、きっとわかるよね?
でも精一杯伝えた言葉に、アレンくんは返事をしてくれない。
涙で潤んだ視界じゃよくわからない。
どうしよう…えっちな女だって思われちゃったかな…っ
「ガァッ!」
そんな居た堪れない沈黙を破ったのは、腕の中から飛び出したティムだった。
「ガァウッ!ガゥ!」
怒ってるような声で、目の前のアレンくんに鳴き叫んでる。
空いた手で慌てて目元を擦る。
ぼやけた視界がクリアに映る。
見えたのは、オレンジ色の光に照らされたアレンくんの───
「…アレンくん…?」
「っ…!」
真っ赤な、顔。
「は。ん。う、ん」
名前を呼べば、吐息のようなよくわからない声で返された。
ぎちぎちと、まるでそんな軋む音を立てそうな、ぎこちない動きをして。
「ご…ごめんね、変なこと、言って…」
「へ、変なことなんて!そんなこと思ってない!」
やっぱり驚かせちゃったんだ。
罪悪感が生じて謝れば、がしりと両手で肩を掴まれた。
さっき抱き起してくれた時より、強い力で。
「で、でも、僕、…僕が…っ」
「う、うん?」
あわあわと開いた口から漏れる言葉は、いつものアレンくんらしくない戸惑いよう。
オレンジ色の光でもわかる程に赤い顔で、軽く呻るようにも聞こえる声は迷いが見えた。
「僕がブッ!」
…ぼくがぶ?
「テ、ティム!?」
躊躇するアレンくんの顔を横に吹き飛ばす勢いで、金色の閃光が弾き飛ばす。
ティムの突進だった。
「何して…っ」
「あだッいだだ!痛いティム!」
頬に激突したかと思えば、鋭い牙でアレンくんの鼻に噛み付いてる。
うわあ、凄く痛そう…っ
「何するんれふ…っ」
「ガァア!ガァッ!」
「それは…ぅぅ」
「ガアアァアッ!」
「わ、わかってます…」
「………」
私には全然わからないんだけど…。
アレンくんの顔面に張り付いて説教するように叫ぶティムに、どんどん項垂れていく白い頭。
アレンくんの傍にいれば自然とティムも付いて来るから、最近は簡単な感情ならわかるようになったけど…細かい言葉の意味まではわからない。
事細かに会話できるアレンくんは凄いなぁ。