第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「アレンくん…わた…私、ね」
「う、うん」
「アレンくんがだいすきなの…」
「うん…え?」
「アレンくんのことが、世界でいちばん、だいすき」
いちばん、なんて。
人を好きな気持ちに順番なんてないのかもしれないけど。
でも、それでも誰よりも好きな自信がある。
私の、だいすきで、たいせつな、ひと。
「生まれてきてくれて、ありがとう…私と出会ってくれて…私と生きたいって、言ってくれて…」
ぱちりぱちりと瞬くアレンくんの顔が、どんどんぼやけていく。
声も覚束なくなって、上手く回らない。
でも、伝えなきゃ
この腕の中にいる小さな温もりが、ほんの少しでも勇気をくれたから。
今、云わなくちゃ。
「私も、アレンくんと生きていたい…隣にいるだけじゃなくて…ちゃんと、心で、繋がっていたい」
「ぅ、うん…それは僕も同じ気持ちですよ」
「…じゃあ、ね…」
ティムを抱いていた腕をひとつ、解く。
オレンジ色に照らされた、赤黒い左手をそっと握った。
導くように手繰り寄せて、左腕を胸に抱いて。
「…椛…?」
ぱちりと瞬けば、頬を滑り落ちる雫。
音も無くシーツに吸い込まれると同時に、私の声も宙へと飛んだ。
「私のぜんぶを、もらって下さい」