第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
ハグもキスも愛の言葉も、いつもアレンくんの方から優しくリードしてくれる。
でも、私の体に手を出そうとしたことは一度もない。
それでも安心感はあった。
アレンくんも私を好きでいてくれる気はしてた。
でも、彼に想いを告げたのは私から。
ずっと長い片想いをしていたから、想いが実った時は凄く嬉しかったけれど…アレンくんは優しいから。
もしかしたら、私に合わせてくれた所が、あったかもしれない。
安心感はあった。
でも…不安もきっと、あった。
半年経っても、そういう素振りを一度も見せて来ないアレンくんに、私はちゃんとそういう相手として見て貰えているのかなぁって。
情けないかもしれないけれど私には大きな悩みだ。
アレンくんとの体の繋がりが欲しいというより、アレンくんとの絆の形が欲しかったのかもしれない。
………欲張りだ、私。
「………」
暗い部屋の中。
零れ落ちそうになる溜息を呑み込んだ。
このまま目を瞑って意識を手放せば、またいつもと変わらない朝がくる。
不安は残ってる。
でも安心感も彼はちゃんとくれる。
…今日がちょっと、ツイてなかっただけ。
また次の機会に…今度は、ちゃんと…
───ぴた、
小さなサインだった。
───ぴた、ぴた、
小さな小さな、小指の先程の掌が私の頬を手打ちしてくる。
小さな小さな、覚えのあるサイン。
ゆっくりと目を開ける。
真っ暗な部屋じゃ詳細まではわからなかったけれど、枕の上で横に向けた私の顔のすぐ目の前にある、まぁるい球体は見て取れた。
「…ティム…?」
常にアレンくんの傍にいる、クロス元帥のゴーレム。
…そういえば、今日はあんまり姿を見掛けなかったかも。
アレンくんのポケットにでも潜り込んでいたのかな?
就寝後にこうして起こしてくることなんてなかったのに、どうしたんだろう。
問い掛ける前に、またぴたぴたと小さなティムの手を当てられる。
頬のすこし上、目元に沿って。
ぴたり、ぴたりと。
まるでそれは涙を拭うような仕草。
「ティム…」
……もしかして…慰めて、くれてる…?
恐る恐る呼べば、まぁるい球体が寄り添ってくる。
小さな手は私の目尻を撫でながら、長くて先が丸いティムの尻尾が私の頭を一、二度撫でた。
本当に、慰めてくれてるみたいに。