第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「あ、アレンくん…っわぷッ」
「あんまり顔を出すと寒いですよ。僕に身を寄せて」
「で、でも、あの…っ」
びゅうびゅうと強い風が顔に当たる。
満足に声も出せなくて、目の前の胸に自分の顔を押し付けた。
上へ下へと揺さ振られる体。
なるべく衝撃が少ないようにはしてくれてるんだろうけど、全く何も感じないでいるなんて無理。
だって、私を抱いたままアレンくんは冬の夜空の下屋根伝いに飛び越え走っているんだから。
真っ白なイノセンスのマントを羽織ったままの姿で。
ノア達と別れた後、アレンくんは抱いた私の体を放すことなく駆け出した。
目的地はアレンくんが言っていた、誰にも邪魔されない特別な場所じゃない。
「見えてきましたよ」
アレンくんの声に顔を冷たい風へと向ければ、鬱蒼と暗い影を背負ったような巨大な建物が見えた。
私には見慣れた場所───黒の教団。
其処が目的地だ。
「───はい、」
大きな教団の門の前に辿り着けば、やっと体は解放された。
下ろしてくれるアレンくんの声は優しいけれど、表情は……少し、硬い。
「痛みはどこもないですか?怪我は?」
「大丈夫だよ」
さっきも同じことを聞かれた。
だから同じ回答を返す。
「でも…ごめんなさい、僕が目を離したばかりに…」
ずっと心配してくれているアレンくんは、それと同じにずっと自分に責任を感じていた。