第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「折角の祝福の日なんだぜ?彼女の為にも紳士でいろよ、少年」
冷たいアレンくんに対して、ジョイドさんは苦笑気味に返しつつ態度は変わらなかった。
ただ分厚い瓶底眼鏡を少しだけ下に下げて、露わになった黄金色の瞳を向けてきたけど。
わぁ…綺麗な顔だとは思っていたけど、素顔は本当に綺麗だった。
左目の下の泣き黒子がなんだか色っぽい。
神田くんも綺麗な顔をしてるけど、それとはまた違う魅力を備えた大人の男性の顔だ。
「I wish you happiness.」
黄金色の瞳は私を見つめたまま、軽やかな声で一言。
見た目は浮浪者に間違われても可笑しくない風貌なのに、彼こそ凄く紳士的な人に見えた。
雪景色に同化するかのように、交えて緩やかに消えていく。
不思議な去り方をする二人を、思わずまじまじと見送る。
「…なんだか夢のような人達だったね…」
彼らの姿が完全に消えてからも、これが現実なのか幻なのか、少し浮足立つような感覚に陥って思わず溜息が零れる。
…本当に足場は浮いてるからふわふわしてるのかも。
「あの、アレンくん…そろそろ下ろし」
「駄目です」
「え?」
いつもなら何か要望を向ければ、優しい笑顔一つで了承してくれるのに。
爽やかな程の綺麗な笑顔で返されたのは、きっぱりとした断りだった。
「も、もう大丈夫だか」
「駄目です」
「ぁ…アレンくん…?」
「駄目」
えぇえ…っ
にこにこと笑っているけれど、有無言わさない無言の圧のようなものにタラタラと汗が流れる。
え、ええと…怒って、るの、かな?