第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「やるべき仕事は一応終わったし。いいだろ?」
「ふぅむ…そうだのう。今宵は皆宴の日だ。偶には世界の波に身を任せてみるのも悪くないかもしれん」
彼の目線を受けて、ワイズリーくんも賛同したようだった。
「御主や小僧は特にの♪」
「「?」」
にっこりと意味深に笑う顔は、首を傾げるノアとエクソシストの二人だけに向けられていた。
あ、そっか。
二人にとって、今日は特別な日だから。
…あれ?
でもなんでアレンくんの誕生日まで知ってるんだろう。
そんな話、してないはずなのに…
(それは主の頭を覗いたからだのう)
「!?」
「どうしました?」
急に頭に響いてくる声に、びくりと体が竦む。
え…今、私の思考に声が…呼び掛けてきたような…
(うむ。ワタシだ、ワタシ。椛に声を掛けておるぞ~)
「えっ…!?」
「椛?」
アレンくんの声も耳に入ってこない程、私の目は信じられないものを凝視していた。
ティキ・ミックの隣でこっそりと手を振ってくる、もう一人のノア。
いつの間にやら額に奇妙で大きな目玉模様を浮かび上がらせている、ワイズリーくんを。
と、いうか。
いぃい今、私の心読んだ…っ
(心を読むと言うには少し違う。ワタシは御主ら他人の頭を覗き見ることができるのだ。小僧の生誕日は、椛の記憶から辿らせてもらったんだのう)
(そんなことできるの…っ!?)
(ワタシをなんだと思っている。ノアだぞ?)
「わぁっ」
応えた!?!!
「大丈夫ですか?まさかどこか怪我でも…っ」
「ち、違うのアレンくん…っ」
(ああ、無闇に話すでない。また小僧の機嫌が悪くなるぞ?これはワタシと椛との秘密にしよう)
え…!ええ…っと…!
「何が違うんですか?」
「あーえーっと…!ちょっと恥ずかしいかなって…ッこの、恰好…っ」
訝し気に様子を伺ってくるアレンくんに、慌てて首を横に振りながら自分でも苦し紛れな言い訳をついた。
でも、半分は本音。
街中でただでさえ目立つ格好をしているアレンくんだから、そんな彼にお姫様抱っこされたままなのは、少し恥ずかしい。