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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】



ジョイドさんがノア?
じゃあ…ワイズリーくんも?
なんでノアが二人もこんな所に…ううん、私に声を掛けてきたの?
まさか…最初から何もかもわかってて…?

頭がぐるぐるする。
目の前の衝撃に思考が追い付いていない。

なんで。
どうして。
そんな疑問符ばかりが浮かんでは目の前で消えていった。



「クリスマスに会うなんて運命的だな?少ー年♪」

「気持ち悪いこと言うのは止めて下さい。椛を放せ」

「少年が荒いことするから助けてやっただけだろ?こんな可愛い彼女がいるなら、なんで教えてくれなかったんだよ」

「貴方とはそういう間柄とは露程にも思ってませんが。ティキ・ミック」



ティキ…ミック?

その名前は知ってる。
アレンくんが方舟で激しい戦闘を繰り広げた、ノア一族の一人。
名前を否定しないということは…本当なんだ。



「つれないね。でもクリスマスの夜に椛ちゃんを一人放っておいたのは少年だぜ?悪い狼に食べられても仕方ないっての」



飄々と語るジョイドさん…基ティキ・ミックは、纏う雰囲気は一つも変わっていないのに背中に寒気が走るようだった。
前髪の隙間から覗く額には、十字架を模したような黒い聖痕。

やっぱり、この人は、ノアなんだ。
教団の敵となる人。



「向ける怒りは俺じゃなく自分自身にだろ。大切なもんがあるならちゃんと傍に置いておけよ。この状況を招いているのは少年、お前の責任だ」

「…っ」



穏やかな物言いだけど、冷たい棘のような言葉。
ティキ・ミックに返していたはずの、アレンくんの言葉が詰まる。
見えたのは顔を歪めて口を結ぶアレンくんの姿。
…アレンくんは優しいから。
相手がノアであったって、きっとその言葉を無碍に否定はしない。
敵であっても向き合おうとする、真っ直ぐな人。

…だから、



「…やめて」



アレンくんは悪くなんかないよ。



「アレンくんを虐めないで」



恐る恐る目の前のノアに呼びかける。
アレンくんに向いていた黄金色の目が、興味深そうに私に向いた。



「…それ冗談?」

「悪いのは気付かなかった私だから、アレンくんは何も悪くない。だから虐めないで」



冗談なんかじゃないよ。
そう応える代わりにもう一度、今度は強く。
触れている彼の腕を掴んだ。

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