第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「何…っわわ…ッ!?」
視界にはジョイドさんの下からのアングルと夜空。
状況を把握する為に周りを見渡せば、ふわふわと浮く感覚を悟った。
浮いてる。
感覚通りに。
周りにあるのは高い建物の壁と空だけ。
「暴れたら落ちるから、大人しくしててよ」
「ジョ、イドさん…っ!」
「そのハグは嬉しいけどねー」
さっき笑った時と同じ。
ジョイドさんはまるで何事も無かったように笑ってる。
私の体を抱き上げて。
それも、宙に。
…えぇえっ!?
どういうこと!?
慌てて目の前の体にしがみつく。
お、落ちる…!
というかなんで落ちないの!?
見えない地面でも其処にあるの!?
「奇襲とは酷いのう」
下層からワイズリーくんの声が聞こえる。
視線を下げれば、ぽつんと視界に小さなワイズリーくんの頭が見えた。
地面があんなに遠くにあるなんて…っ
「ワタシらは御主を捜していたのだぞ。椛が困っておったからの」
「彼女を利用していただけでしょう」
───あ。
ワイズリーくんに応える、丁寧だけれど冷たい声。
聞き覚えのある声に思わず身を捻った。
今の声…っ
捻った視線の先。
月のクレーターのような凹みが地面の雪を一層して削っている、その中心。
周りの雪景色と同化するように、真っ白なマントを翻す真っ白な頭の男の子。
「アレンくん…ッ」
ずっと捜していた、彼の姿があった。
「身を乗り出したら落ちるって」
「で、でも…っジョイドさん、あの、あれ、アレンくんで…ッ」
「うん、知ってる」
え?
「ごめんな」
私を見下ろして、ジョイドさんが笑う。
申し訳なさそうな、少し悲しげな顔で。
なんでアレンくんのことを知ってるんだろう。
なんでそれを黙ってたんだろう。
そんな疑問を問い掛ける前に、答えは目の前に現れた。
白人の肌だったはずのジョイドさんの皮膚が、塗り換わっていく。
まるで上から色を足していくみたいに。
浅黒い褐色の肌。
それと同時に瓶底眼鏡の奥の目が、輝く黄金色を放った。
「…ぁ…」
それだけで常人ではないことがわかる。
でもそれ以上に、身体の特徴は私を戦慄させた。
黒の教団で働いている者なら、誰しも知っている。
それが指し示す者。
「……ノ、ア?」