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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】



「じゃあ。はい」

「…はい?」



だけどそれは一瞬だけで、不意に高い位置にあった顔を私の前に下げてくる。
なんだろう?



「折角のプレゼントだし、椛ちゃんに巻いて欲しいかな。お願いしていい?」

「ジョイド御主…下心甚だしいぞ」

「うっせぇな。折角椛ちゃんにお祝いされてんだ、お前は水指すなよ」

「は、はいっ」



それくらい別にどうってことない。
それよりジョイドさんがワイズリーさんと口喧嘩することの方が回避したい。
慌てて目の前の首にショールを掛けて、きつくない程度に首周りにぐるぐると巻いた。



「苦しくないですか?」

「うん、いい感じ」



女物のショールだけど、真っ赤な色は不思議とジョイドさんの顔に映えて似合う。



「椛ちゃんの言う通り、あったかいなこれ」

「本当っ?良かった」



思わずほっと笑えば、ジョイドさんの笑みも深まる。



「なんとなくわかったかも」

「何がですか?」

「…んー…少年の気持ち?」



少年…って、アレンくん?
気持ちって、なんの気持ちだろう?

よく意味がわからず首を傾げても、ジョイドさんは優しく笑うだけ。



「ありがとう。これで嫌な仕事を受けた甲斐ができた」



そんな大袈裟なプレゼントじゃないけれど…でも、ジョイドさんの中で意味ができたなら良かった。
思わず照れが混じれば、ジョイドさんの眼鏡の奥の目が更に優しく細められるから。
手持ち無沙汰に頬を掻きながら応えていると、不意に手首に違和感。

ん?



「…ジョイドさん?」



視線を下げれば、私の手首を握っていたのはジョイドさんの大きな手だった。
なん───



「っ──!?」



声を上げる暇もなかった。
急な力に腕を引かれて、構える間もなく体が傾く。
どふんっと地面か水か、何処とも言えない所にぶつかるような衝撃音が響いて、忽ち視界は真っ白に塗り潰された。
冷たい風と水が顔に当たる。
それが衝撃で舞った地面の雪だと気付くのには時間が掛かった。



「荒々しい挨拶だな」



ジョイドさんの笑う声がすぐ近くで聞こえた。
…挨拶?



「え…っ!?」



雪で真っ白に閉ざされていた視界が晴れていく。
体がふわりと浮く感覚。
ジョイドさんの顔が、何故か視界の上にあった。

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