第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
いきなり触れられたのに、その仕草は自然過ぎて嫌味がない。
なんだろう、女性慣れでもしてるのかな?
…こんな風貌で?
「あの…近い、です…」
「そ?…俺みたいなのに触られんの嫌?」
「ちが…っ」
そういうつもりで言った訳じゃない。
でも似たようなことを考えてしまったのは事実。
慌てて否定しようとすれば、その前にジョイドさんの手と体はあっさりと離れた。
「ご、ごめんなさい」
「いいって、気にしてな…へっくしゅッ!」
嫌だった訳じゃない。
でも私が触れて欲しい男性は、アレンくんだけだから。
慌てて頭を下げれば、笑顔と同時にくしゃみを返される。
凍死とまではいかなくても、このままじゃジョイドさん風邪を引くんじゃないかな…。
───そうだ。
「あの、ジョイドさん。これ…私の使い回しで悪いですけれど…」
「?」
「人捜しを手伝ってくれたお礼です。女物だけど無いよりは良いだろうから、使って下さい」
持っていた紙袋から、赤いショールを取り出す。
寄付しようと思っていた私物だけれど、今すぐ必要な人が目の前にいるなら、その人にあげよう。
「手伝うって言っても、少年はまだ見つかってねぇし…それに多分、チャリティーで寄付する物なんだろ?それ」
「はい。でも他にも寄付する物は沢山あるから。それにジョイドさん、今日が誕生日なんでしょう?」
言えば、驚いた顔が瓶底眼鏡越しに伝わった。
「さっきその話をワイズリーくんとしてたのが聞こえたから。盗み聞きみたいなことしてごめんなさい。でも、おめでたい日ですね」
そうだ、アレンくんと同じ。
世界はクリスマスを祝うけれど、ジョイドさんにとってはこの世界で生を迎えた大切な日。
何よりもそれをお祝いしないと。
「お誕生日、おめでとうございます」
笑顔でショールを差し出す。
生地は小さいけれど、巻くと結構暖かくなれるんだよね。
すると眼鏡の奥の目が、ぱちりと瞬く。
呆気に取られたようなジョイドさんの顔は、少し可愛いなぁと思った。