第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
それから30分。
「此処にもいない…」
「はー…マジで何処行ったんだ、少年…」
「中々の方向音痴だのう、これは」
見ず知らずの(多分)浮浪者さんと(多分)貴族の青年と共に、アレンくんを捜し回った。
コンサートの邪魔はできないから、少し離れた場所で目立つはずの白髪を捜す。
だけど見つからない。
「ぶぇっくしょんッ!」
「のうジョイド、30分経ったぞ。凍死はまだか?」
「うるせ」
ニヤニヤとからかうように笑うワイズリーくんに、ジョイドさんはむすりと仏頂面を背けた。
年齢差はありそうだけれど、聞いているとワイズリーくんの方がジョイドさんより上手な感じがする。
「にしても少年がねー…クリスマスに女の子と野外デートなんて」
「隅に置けんのう」
「そう…ですか?」
「ああいや、なんとなく?」
「その場のノリだのう」
まるでアレンくんを知っているような口調に反応を返せば、愛想の良い笑顔を向けられた。
なんだろう、独特の癖がある人達だなぁ…。
アレンくん捜しを手伝ってくれてるから、きっと良い人達なんだろうけれど。
「お嬢さん可愛いし。こんな彼女を持てるなんてなって」
「そ、そんなことないです…」
「そんなことなくねぇよ。それ全部、少年の為に飾ったんだろ?似合ってる」
そう笑ったジョイドさんの目線が辿ったのは、編み込みアップにした私の頭。
綺麗にまとめた髪に添えたのは、クリスタルの雪結晶。
真っ白なリボンが付いていてひらひらと揺れる、一目惚れした可愛い髪飾り。
髪飾りに合わせてコートの下の服装も、ベルベット生地の黒いワンピースに白い雪結晶が左肩とスカートに控えめに散ったもの。
シックで大人びた雰囲気だけど、可愛さも忘れていない。
このワンピースも一目惚れして買ったもの。
今日の日の為に用意してた。
気合いは確かに入ってるから、褒められると嬉しくはなるんだけど…今日初めて会った男性にそんなふうに褒められると、なんだか気恥ずかしい。
「可愛いよ」
「…っ」
ジョイドさんの指が髪飾りのリボンに触れて、いつの間にか近付いていた距離感覚を知る。
アレンくんより遥かに高い身長だから、見上げると少し首が痛い。
それを理由に慌てて頭を下げた。
笑顔が綺麗で、照れが強くなる。