第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
アレンくんのことだから、きっと今頃私を一生懸命捜してくれてるはず。
それが悪い方向に転がって、どんどん迷子になっていってしまったのかな…。
「…ほう?」
下がる気持ちを抑えられずに俯いたままでいた私の頭の上に、降ってきた声。
「なんとも興味深いのう」
それは意味深な青年の言葉だった。
「お前、見ず知らずの他人の頭まで覗くの止めろよな…」
「まぁそう言うでない。───のう、御主。名はなんと言う?」
「え?」
今、私に問い掛けられたの?
慌てて顔を上げれば、やっぱり青年の顔は私に向いていた。
「椛って言います」
「ふむ、椛。ワタシらもその少年を捜す手伝いをしてやろう」
「え?」
「は?」
驚いた声は二つ。
私と瓶底眼鏡の男性のものが重なった。
「いきなり何言い出すんだよ、ワイズリー。そんなことしてる暇ねぇっての」
「まぁ聞け。椛、少年を捜す為だ。その名も教えてもらえるか?」
どうやら青年の名前はワイズリーと言うらしい。
あまり聞かない名前だなぁ…って、今はそんなことより。
「彼の名前はアレンです。左眼の辺りに痣みたいなものがあるから、見掛けたらすぐにわかると思います」
申し訳ない気もするけど、今はアレンくんを見つける方が優先事項。
願ったり叶ったりだとアレンくんのことを伝えれば、不意に黒髪の男性が黙り込んだ。
「…ふぅん」
咥えていた煙草の煙を吐き出すと、徐に雪の上に放る。
しゅっと小さな音を立てて炎が雪に塗れて消える。
「いいよ。その少年捜し、手伝う」
まるでさっきまでの抵抗が嘘のように、男性は笑った。
わ…この人、大きな瓶底眼鏡が邪魔して顔はよく見えないけれど、笑うと意外に綺麗なのかも。
「あ、ありがとうございますっ…えっと…」
大きく頭を下げて礼を言う。
ふと疑問に思えば、それだけで伝わったんだろう。
「ジョイド。それが俺の名前」
そう、自分の名前を教えてくれた。
ジョイドさんかぁ…やっぱり、聞かない名前だ。