第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
あまりの大きさに驚いて振り返る。
だけど其処にいたのは、アレンくんじゃなかった。
「う~…さっみぃ…後30分もすれば凍死しそうなんだけど俺…」
「そんな肌寒い恰好で来るのが悪いのう。何故白の姿で来たのだ」
「急に呼び出したのはそっちだろ。クソ、イーズ達と飯食ってたってのによ」
両腕で自身の体を抱いて震えているのは、高身長の男性だった。
虫食いされて穴だらけのズボンにほつれた薄い服、そして紐の千切れたブーツ。
何日も洗っていないようなぼさぼさの黒い髪に、瓶底のような分厚い眼鏡。
一目見れば思わず浮浪者と疑ってしまうような人だ。
くしゃみをした時に漏らした鼻水をズズと啜って、悪態を突く。
その先には、彼とは見合わない恰好をした青年が立っていた。
裕福そうな高級感溢れる上着に身を包んだ、薄い金髪の切れ目の青年。
身長は男性に比べれば大分低いけれど、男性とは別の意味で目立つ。
「黒に成れば良かろうが」
「この用事済ませたらイーズ達んとこ戻るんだよ。めんどくせ」
「御主も中々偏屈な所があるのう…」
「お前に駄目出しされたくねぇよ」
身に付けているものはまるで違うから、身分も違うんだろう。
けれど凄く砕けた会話をしているから、二人の間に格差はないのかな…にしても男性の方は青年を嫌ってるような雰囲気がするけれど。
「しっかし、なんでこんな小さなコンサートの下見調査なんか…千年公も変な所に目ぇ付けるよなー」
「そうでもないぞ。此処は所謂孤児の門。不幸を背負っている者達の為の催しだ。そういう所には、自然と悲劇も集まってくる」
「ふーん…そういうもんかね…」
青年の割には、お年寄りのような喋り方をする変な人。
その人の言葉に相槌を打つ男性は、興味なさげにコンサートを見つめていた。
此処にいる人達は、寄付だけじゃなく音楽を聴きに来てる。
ああも興味ない顔でこの場にいる人は珍しい。
「あー、早く帰りてぇ…」
「いつにもまして恋しがるではないか。何故…ああ。成程」
皆まで聞かず、金髪の青年が納得したように頷いた。
「今日は御主の誕生日であったのう」
え?
またアレンくんを捜しに行こうと思っていた私の足が、思わず止まった。