第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「アレンくんっ」
「何?」
「私持つよ…っそれ、全部私の私物だから」
「いいですよ、これくらい軽いですし。それに椛も荷物持ってるでしょ?」
「でもこれだけしか…っ」
「それだけで充分。男の面子、立たせて下さい」
さくさくと雪を踏む二つの足音。
先を歩いていたアレンくんは振り返ると、にっこりと笑ってそう返してきた。
ああ、もう。
そんなこと言われると強く出られなくなってしまう。
陽も落ちた夜の街。
でもクリスマスのイルミネーションがあちこち施されているから、街中は明るい。
折角の子供達へのギフトだし、寄付できるものはなんでも寄付しようとまとめたら、大量の荷物ができてしまった。
大きな紙袋三つ分。
それを両腕にぶら下げて進むアレンくんの足取りは、本人の言う通りに軽い。
「それで、コンサート会場はどっちでしたっけ…あっち?」
「多分違うんじゃないかな。こっちだよ、」
流石、教団でもすぐ迷子になる生粋の方向音痴アレンくん。
昼間通ったこともない道を進もうとするから、慌てて訂正した。
危ない危ない。
こんな時に迷子になられたら、色んな意味で困る。
「はぁ…にしても、寒くなったねぇ…」
「そうですね。コンサートは聴きたいけれど、野外ですし。あまり長居しないようにしましょうか」
「うん」
アレンくんを案内するように一歩先を歩いていれば、見えてきた会場広場。
しっかり出来上がったコンサート会場の上には、バイオリンやチェロやトランペット。
様々な楽器を手にした演奏者さん達が並んでいた。
うわぁ…なんだか楽しそう。
「アレンくん、もう始まってるよっ」
流れてくる音楽は賑やかでポップなクリスマスソング。
会場には一層鮮やかなイルミネーションが施されていて、幻想的な空間に変わっていた。
つい声も足取りも弾む。
駆け寄れば、会場の周りには結構な人だかりがあって密集地となっていた。
わあ…この中を掻い潜って寄付しに行くのは大変かも…。
「もう少し早めに来てればよかったかな…」
「大丈夫ですよ、寄付とあらば皆道を開けてくれるでしょう」
「あ、待ってアレンくん…っ」
私の不安とは余所に、明るい顔をしたアレンくんは迷いなく人だかりの中へと進んだ。
ま、待ってっ