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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】



「ふふ。なんだかこっちまで嬉しくなるね」

「そう?なんで?」

「だって、」



雪ちゃんも屈強な男性ファインダー達の中で揉まれたからか、しっかり自分の意志と強さを持っている。
それでいて話すと砕けて面白い一面も持ってる、柔軟ある楽しい人。
だからきっと癖の強い神田くん相手でも、きちんと向き合えるんだろうな。

こうしてよく見ると、皆それぞれお似合いでこっちまでほんわか嬉しくなる。
クリスマスという日は、本当に誰しもに幸せを運んできてくれる日なのかも。



「世界が愛で溢れてるなぁって」



私とアレンくんだけじゃなく、皆が幸せになれる日。
そんな一日、早々ないと思うから。



「………」



そんな私に、アレンくんは優しい笑顔で賛同してはくれなかった。
まじまじと見てくる顔に、少しだけ不安が浮かぶ。
な、何か変なこと言ったかな…?



「…なら、その"愛"。僕も欲しいな」

「え?」



いつの間にか料理を全て平らげて綺麗になった皿を退かして、アレンくんが手を伸ばす。
触れたのは机に置いていた私の手。
上から重ねるように優しく握られて、ドキリとした。



「他の誰でもない、椛からの"愛"が僕は欲しいです」

「ぅ…うん」



それは、そのぅ…深い意味、あるの、かな…。
この後のことを思うと余計なことをぐるぐる考えてしまいそうで、顔が熱くなる。



「アレンくんが欲しいなら…あげる」



でも、これは本音だから。
戸惑いながらもちゃんと伝えれば、アレンくんからの返事はなかった。
ただ、触れていた手は確かに握られたまま。
そこから変な熱を帯びていくようで、あまりアレンくんの顔を直視できなかった。



本当に、アレンくんと初めて体を重ねるんだ。
ふわふわと浮いていた淡い物事が、急にはっきりと現実味を帯びたような気がしたから。









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