第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「クリスマスと誕生日が一緒だなんて、めでたい奴さな」
「そうなの、おめでたい日なの。だからあれどうにかしてっ」
「えぇえー…オレも命が惜しいし。あれはリナリーくらいしか止められないんじゃね…」
「そんな無責任な…!」
発破かけたのはラビくんなのに!
「あ、いや違うな。もう一人いた」
どうしようかと頭を抱えていると、不意にぴんときた顔でラビくんが人差し指を立てた。
もう一人?
リナちゃん以外に二人を止められるような人っていたっけ?
「もしかしてクロス元帥とかっ?」
「や、違うさ。それは───」
「ユウ!」
ラビくんが答えを出す前に、響いた高い声。
途端に、神田くんの物騒な表情が一瞬止まった。
「はぁ…っ良かった、なんとか間に合った、かな…っ」
小走りに駆け寄ってくる、白いファインダーのマントを羽織った女性。
背中に背負っている機材を見れば、任務帰りなんだとわかる。
それは教団で一番人の多いファインダーの中で、一際目立つ珍しい女性探索班───月城雪ちゃんだった。
「あれ。雪さん、任務に出てたんですか?」
「うん。今戻ったとこ」
「お帰りなさい、お疲れ様です」
「ありがとう、アレン」
駆け寄る雪ちゃんの姿に、殺気立っていたアレンくんの気も治まる。
…あ。
もしかして止められるもう一人の人物って…
「ラビくん、」
「ビンゴ」
雪ちゃんを指差してラビくんを見れば、多くを語らずとも笑顔で頷いてくれた。
やっぱり。
二人を止めるというより、神田くんに対して雪ちゃんの効果は絶大な気がする。
その証拠に、あんなに周りを近寄らせなかった神田くんの黒いオーラが、いつの間にか消えていた。
「遅くまでお疲れさ~雪」
「お疲れ様、雪ちゃん」
「二人もありがとうね」
「にしてもギリギリセーフさな。日付はまだ越えてねぇさ」
腕時計を指差して言うラビくんに、雪ちゃんは言葉なく少しだけ笑って返した。
今日はクリスマスだから…それで急いで帰ってきたんだろう。
雪ちゃんがその日を一緒に過ごしたい人が、教団にいるから。