第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「折角のめでたい日なのに、そんな顔してたら福が逃げてくさ~。ほら、アレみたいに」
アレ?
笑ってラビくんが指差したのは、私達の後方。
振り返れば…わあ。
いつも以上に眉間に皺を寄せて、黒いオーラを醸し出しながら食堂を歩いている神田くんの姿があった。
周りの人達が恐怖で距離を取ってる…。
「うわ、嫌なもの見た。ラビ、縁起の悪いもの見せないで下さいよ」
ごくんとチキンを嚥下して、さっきより更に顔を顰めるアレンくん。
でもそんなこと言っていると、多分───
「今なんつったクソモヤシ」
ああ、ほら。
お互いのこととなると地獄耳な二人だから。
アレンくんの小言を、神田くんの耳はしっかり拾ってしまったらしい。
「別に、単なる独り言ですよ。視界にその物騒な面入れないでくれませんか。椛に見せたくないので」
「知るかテメェが勝手に俺の視界に入ってきてるだけだろうが。うざってぇ料理山積みにしやがって。視界の邪魔だ」
「先にこの席に座っていたのは僕です。神田に関係ないでしょう?あっち行って下さい」
「ァあ!?」
ああ、ほら。
シッシッとまるで子犬か何かを追い払うようなアレンくんの仕草に、ぶちんと神田くんから何かが切れる音がした。
やっぱり二人揃うとすぐ喧嘩になっちゃう…。
「ら…ラビくん、止めてよ」
「オレには無理さ~」
「じゃあなんであんなこと言ったの…っ」
ラビくんが神田くんを名指ししなければ、喧嘩なんかならなかったかもしれないのに。
「だってさー、アレンだけクリスマスにラブラブ幸せそうにしてんのって……癪じゃん?なんか」
それ思いっきり僻み!
「今日はアレンくんにとって大切な日なのっその日を気分悪いものにさせないでっ」
「クリスマスだからだろ?」
「違うよ…っ」
今日はアレンくんの誕生日なんだから。
きょとんとしているラビくんは、どうやらそのことは知らないらしい。
「今日は、アレンくんの誕生日なの」
「へ?アレンの?」
「うん」
至近距離で睨み合いバチバチと火花を飛ばしている二人の被害を貰わないよう、こそこそとラビくんの耳元で打ち明ける。
驚いてるってことは、やっぱり知らなかったんだ。