第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
がつがつ、ごくごく、もぐごきゅばくんっ
凡そ人が食事の際に立てない、それこそ漫画に出てくる擬音のようなものを立てて料理を咀嚼する。
咀嚼というより、飲み込んでいく。
そんな恋人の食事風景は、何度見ても天晴れだと思う。
此処は教団の食堂広間。
机に大量の料理が山積みされているものの、あっという間にそれは姿を消していった。
ごくんごくんと白い喉を鳴らして飲み込んでいく、一人の男の子によって。
「凄い美味しそうに食べるねぇ、アレンくん…」
「らっておいひいんれすもん!」
「そうだね、ジェリーさんの腕前はピカイチだもんね。でも、ちょっとだけ手を止めて」
「? ん、プ」
「そのソースが服に垂れちゃったら取れなくなるから」
慌しく上品さの欠片もない。
お昼にお洒落なお店で食事をした時の姿なんて消え去ったアレンくんの、口元に付着したデミグラスソースをナフキンで拭き取る。
よし、これで大丈夫かな。
「は~ぁ、クリスマスはいつにも増してラブラブさな~。胸焼けしそ」
そこに呆れたような溜息が飛んできて、顔を上げれば燃えるような赤髪が目に入った。
向かいの席に座って頬杖を付いているのはラビくん。
あれ?
さっきまでこの席には私とアレンくんしか座っていなかったはずなのに。
いつの間に自分のご飯まで持ってきて座ってたんだろう。
「別にラブラブしてなんか…」
「ま、確かに恋人同士のイチャつきってより、親が子の世話するようなもんだなソレ」
「そ、そう?」
それはそれで嬉しくない…。
「なんれふか、ラビ。邪魔なんでどっか行ってくらはいよ」
「酷ぇっ」
骨付き肉に齧り付きながらアレンくんの目が鬱陶しそうにラビくんを詰る。
二人でいる時は特に、ラビくんが来ると嫌がるんだよね。
「いいじゃんか、折角のクリスマスだしさ~。もっと寛大になれよアレン。椛はなんもお前だけの椛じゃねーんさ。オレにとっても仲間なの」
な?と催促してくるラビくんに、そんなことを言われれば否定なんてできない。
そうだね、と頷けば益々アレンくんの顔がむすりとしたものに変わった。
…ラビくん、わざとアレンくんをからかってるんじゃないのかな…。