第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「また、お出掛けするの?」
結局問い掛けられたのは、そんなもの。
私の真意はきっと伝わっていない。
「はい」
だってアレンくんは迷い無く綺麗な顔で笑ったから。
…忘れちゃったのかな。
そう思うと、あんなにドキドキして焦っていた程の心だったのに、なんだか…哀しく、なった。
寂しいような、そんな気持ち。
アレンくんにとって私は──…
「約束したでしょ?」
不意に繋いだ手に力がこもる。
「朝。…椛のこと」
その手と同じように、静かだけど確かにはっきりと届いた声に思わず顔が上がった。
見えたアレンくんの顔は、もう綺麗な笑顔を浮かべてはいなかった。
真剣な目で、でも少し照れの混じった顔で。
それって…
「憶えてない?」
「っ」
そんなことないっ
慌てて首をぶんぶんと横に振れば、安心したようにほっとアレンくんが笑う。
「聖なる夜にって、約束したから。だからその夜は、教団に帰したくないんです」
え?
「それって…今日は帰らないってこと?」
「うん」
てっきりアレンくんの部屋か私の部屋か、場所は其処だと思ってたのに。
「特別な日ですから。誰にも邪魔されない所で、椛と過ごしたい」
繋いだ掌に汗を掻きそうになる。
アレンくんの言葉一つ一つに胸が騒いで。
「その、場所って…」
「大丈夫。ちゃんと用意してますから」
そうなの?
決めたのは今朝なのに、いつ部屋の予約なんて取ったのかな。
でもアレンくんのことだから、きっと素敵なホテルか何か、用意してくれてるんだろうな…。
「椛が僕だけを見てくれるように」
そんなことしなくたって、私はアレンくんしか見てないよ。
そう言おうとした言葉は呑み込んだ。
この場で言うのはなんだか野暮だと思ったから。