第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
「……それだけ?」
「…うん。それだけ」
呆れられたかな。
まじまじと見てくるアレンくんにそう返せば、ぱちりと瞬いた目が──あ。顔を逸らした。
どうしたんだろう。
「アレンくん?」
「なんでもないです。ちょっと物思いに耽ってて…っ」
なんでそこで物思いに耽るの。
思いっきり体震わせてるけど。
なぁに、可笑しくて笑ってるの?
「もう、笑わなくたっていいじゃないっ確かにいい加減な理由かもしれないけど…っ」
私には大きな理由なんだから。
「いい加減なんて思ってませんよっ」
思わず声が大きくなれば、それ以上の声でアレンくんに捲し立てられた。
「寧ろ可愛いなぁと思って…っ」
「えっ」
可愛い?
「あんまり椛が可愛いこと言うから、直視できなかったというか………はは、」
最後には少し照れた様子で、ペンタクルの跡が残る頬を掻きながらアレンくんが笑う。
つられて照れが伝染するように、私の頬も熱くなった。
「そんな嬉しい理由なら、いつでも付き合いますよ。だからいつでも誘って下さい」
照れを混ぜつつも、優し気な笑顔と声で誘う。
迷いなんて見当たらないアレンくんの纏う空気に惹かれて、自然と足は一歩前へと進み出た。
「じゃあ…腕、組んでも、いい?」
こうして手を握って寄り添うのも好きだけど。教団ではあまりできない恋人らしいこと、してみたいかも。
恐る恐る頼み込めば、アレンくんは何も言わずともにっこりと笑って腕を差し出してくれた。
そこに自分の腕を絡めて身を寄せる。
もふりと、首周りを覆っていたマフラーが当たるくらいに近い。
さっきよりもっと縮まる距離に、吐く白い息までよく見える。
少しだけ目線が上に上がる。
「じゃあ折角だし。椛とクリスマスの街を楽しもうかな」
誘うように声を掛けてくるアレンくんに、私も一つ返事で頷いていた。