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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】



「ループタイだっ」

「アレンくんリボンタイは沢山持ってるけど、ループタイはあまり見ないから。そういうのも似合うんじゃないかなって」

「うん、持ってないデザインだから凄く嬉しいです! 綺麗な色だなぁ」


 まじまじと手にしたループタイを見つめるアレンくんの喜びように、ほっと胸を撫で下ろす。
 よかった、喜んで貰えた。


「ありがとう、椛」


 緩んだ頬に下がる眉尻。
 ふにゃりとした柔らかい笑顔。
 紳士的で爽やかな笑顔とは違う、アレンくんの"感情"の笑顔。

 …うん、やっぱり私、その笑顔が大好きみたい。






























「──はぁ…っ寒いねぇ」

「ホワイトクリスマスですから」


 お店を出れば、ちらほらと舞う粉雪の白い世界が広がっていた。
 マフラーを顔元に寄せながら呟けば、アレンくんが右手を差し出してくる。
 何も言わなくても当たり前に交わされる行為の一つ。
 そこに手を重ねれば、優しく握り返してくれた。

 繋いだ手に、体をアレンくんへと寄せる。
 私だけに許される行為。
 そんな些細なことが、結構嬉しかったりする。


「それで、椛の行きたい所って?」


 白い雪が積もった煉瓦道を、ゆっくりと私の歩幅に合わせて歩きながらアレンくんが問い掛けてくる。
 そうだった、そんなことを今朝方言って、デートに誘ったんだっけ。


「うん、……特にないの」

「え?」


 お恥ずかしながら。

 きょとんと見てくるアレンくんの視線から逃れるように、マフラーに顔を埋めた。


「アレンくんと、こうしてクリスマスの街を歩きたかっただけなの」


 手を繋いで、二人だけで。
 世界中にとって特別な日に、そしてアレンくんにとっても特別な日に。
 それは私だけの特権だ。


「二人だけで。そういうの、いいなぁって…思って」


 …なんだか話してるとどんどん恥ずかしくなってきた。
 マフラーに顔をもっともっとと埋めていくと、もごもごと声がこもってしまう。
 ちゃんと聞こえたかな。

 反応のないアレンくんをちらりと横目に見れば、ぱっちりと開いた目と目が合った。

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