第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
迷うようにぎこちない言葉で、でもその瞳はしっかりと私を映していた。
『もう、遅いかもしれないけれど…もし、まだ許されるなら──』
〝僕と一緒に生きてくれますか〟
そんなプロポーズとも言えるような台詞を口にしたアレンくんは、仄かに赤い顔をしていた。
あまりの衝撃に驚いてすぐに反応できなかったんだけど。
…あの時のアレンくん、可愛かったなぁ。
「確かに頂戴致しました」
「はい」
目の前で交わされる二つの声。
はっとして瞬けば、お店のボーイの人から領収書を受け取るアレンくんの姿があった。
いけない、また考え事しちゃってた…ッ
「満足しました?」
「あ、うん。今日はアレンくんの誕生日だから、ここは私がお金──」
「いいですよ。お店を選んだのは僕だから。此処の料理、椛に食べさせたかったんです」
美味しかった?と笑顔で聞いてくるアレンくんに、それ以上は強く言えなくなる。
「うん、とっても」
「ならよかった」
こんなお店、知ってたんだ。
大食漢なアレンくんは選ばなさそうなお店だけど…。
「そろそろ出ますか?」
「あ、ちょっと待って」
アレンくんが席を立つ前に、綺麗に食器が片付けられたテーブルの上に鞄から取り出した包みを差し出す。
教団に戻ると皆いるから、ゆっくり渡せそうにないし。
今渡しておこう。
「お誕生日おめでとう、アレンくん。これ、誕生日プレゼント。あんまり大したものじゃないけど…」
「椛が選んでくれたんだ?」
「うん」
「わぁっ嬉しいなぁ」
包みを受け取るアレンくんの顔が、そわそわと笑顔を灯す。
ああ、やっぱりアレンくんの笑顔って好きだなぁ。
「開けてもいい?」
「勿論」
ネイビーカラーでラッピングされた包みを解けば、出てきたのは細長い箱。
中には飾られたループタイが収まっていた。
アンティーク風の丸いコイン柄の中心にはターコイズの石が嵌められていて、ぱっと鮮やかな色を放つ。
インディアンジュエリーの人気作の一つ。
一目見てアレンくんに似合うと思ったからそれを選んだ。
ブランド商品だから少し値は張ったんだけど、そこは秘密。