第12章 ⓇMerry christmasの前にⅡ【アレン】
アレンくんとは、付き合い始めて半年以上経つ。
想いを告げたのは私からだった。
教団に来たばかりの頃は、色白で頭もお爺さんみたいに真っ白で体の線も細かったから、全体的にひょろっとしたか弱そうな男の子の印象があった。
だけど初めて言葉を交えた時に見せてくれた優しい笑顔は私の心に何故だか残って、ずっと忘れられずにいた。
それからエクソシストとして沢山の死線を越えて経験を積み、心身共に成長していったアレンくん。
幼かった顔立ちは異性らしい凛々しいものに変わって、臨界点を突破した今ではエクソシスト元帥と変わらない実力を持つ。
気付けば小さな引っ掛かりは大きな好奇心に変わり、やがて強い恋心へと育っていた。
どんなに成長しても、変わらず物腰柔らかく紳士的で誰にでも優しいアレンくんは教団でも凄く人気があった。
遅かれ早かれ、いつかその隣に当たり前のように並ぶ女性が出てくる。
そんなことを考えると、凄く苦しくて。その辛さから逃げるように、思い切って想いを告げた。
半分は玉砕覚悟もあったんだけど。
『ごめんなさい』
アレンくんの出した答えは、予想していた通りのものだった。
だけど断る理由は、予想していたものじゃなかった。
自分はエクソシストだから、と。
聖戦に身を置いているから、と。
普通の平和な暮らしを送れないから、大切な人は作れない。
アレンくんらしい慈悲や配慮の混じった理由。
だけど私にはそれは断る理由にはならなかった。
"普通"なんて基準、教団で働いていなくたって何処にもない。
平和だって必ずしも約束された地位なんてない。
此処が平和とは程遠い、戦争を交える組織ということは知っている。
私もそれを覚悟して此処で働いているから。
『その覚悟は私も持ってるよ。私が自分で決めた生きる場所だから。其処でミアを好きになっただけ』
アレンくんがエクソシストだから好きになったんじゃない。
その澄んだ銀灰色の瞳に、私を映して欲しかっただけ。
想いは受け取ってもらえなかった。
凄く辛かったけれど、自分で選んだ道だから仕方ない。
行き場のない想いは閉じ込めなくちゃ。
『っ椛、さん』
そう思っていた一週間後に、アレンくんに声を掛けられたんだ。