• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)



「──…で、オレんとこに愚痴りに来た訳さ?」

「…別に、愚痴りになんか…」

「ハイハイ。ま、ユウの手が早いのなんて今更さ。諦めろって」


 神田から逃げた先の談話室。
 其処で見知った赤毛の青年を見つけて、気付いたら声をかけていた。
 そして気付いたら、神田の不満をグチグチと口にしてしまっていた。

 神田への私の想いを知っている人は少ない。
 だからこそ、この不満も愚痴も言える人は限られてしまう。
 この目の前の赤毛の兎さんは、そんな数少ない中の一人。私の想いを、知っている人。


「オレもよく殴られてるしさー。グーで遠慮なく頭殴るから、痛いのなんのって」

「だからってさ…ちょっと距離取ろうとしただけで殴るなんて…度が過ぎてない?」

「それがユウなりのコミュニケーションなんさ」


 あ、私が自分に言い聞かせてることと同じこと言ってる。


「それにオレから見れば、充分ユウは雪に優しいと思うけど」

「…は?」


 何言ってんの、兎さん。

 突拍子もないラビの言葉に思わず目が点になる。
 どこをどう見たら優しくしてるって思えるんだろう。
 あんなにバシバシ頭叩いてくるのに。


「ラビ、目大丈夫?」


 眼帯なんてしてるから、よく見えてないんじゃないの。


「酷っオレの目は正常だから! 寧ろ雪の方がもっとちゃんと見るべきだって。ユウは優しいだろ、雪に対してだけだけどッ」

「だからどこをどう見たらそう思えんのッ」


 心外だとばかりに声を上げるラビに、私こそ心外とばかりに言葉を返す。
 ラビが神田のフォローするなんて珍しいけど、賛同してあげる気はない。

 優しいっていうのは、リナリーに対しての態度みたいなのを言うんだよ!
 神田、リナリーには手を上げないんだよ!?
 私なんてスパスパ叩かれてるのに!

 恋人より幼馴染ですかそーですか。
 神田の優しさは美少女限定ですかそーですか!


「そこはホラ、殴る度合いというか──」

「そこまで言うならラビが代わってくれるかな、私が頭殴られる時!」

「や、それはゴメン」


 ほら見ろ。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp