第11章 ◆12/6Birthday(神田/セカンズ)
「アルマ」
「なぁに? トゥイ支部長」
凛とした彼女の声が響けば、自然と騒動も落ち着く。
きょとんと見上げてくるアルマを静かに見下ろして、トゥイは再度口を開いた。
「お前はこの日のことを、後悔しているか?」
「え?」
「ト、トゥイ支部長何を…っ」
「しっ黙って」
セカンドエクソシストとして聖戦の駒となる為、人工的に造られた使徒であるアルマ。
彼は自身の生い立ちを知らないが、存在意義を問うのは研究員達の間で御法度とされていた。
慌てふためく研究員達に、しかしそっとエドガーが止めに入る。
「此処で目覚めたこと、後悔しているか」
「……」
真っ直ぐに見下ろしてくるトゥイの真っ黒な瞳は、一度たりとも逸らされない。
ぽかんと見上げていたアルマはやがて開いていた口を閉じると、両の口角をゆっくりと上げた。
「ううん。後悔なんてしてないよ」
ぱっちりと開いた二つの目はトゥイではなくユウに向いて。
「だって、ユウと出会えたから」
いつもの弾んだ声色ではなく、噛み締めるように告げられた思い。
弾丸のように突っ込んでは来ないアルマの姿を前に、ユウは微かに目を見開いた。
「ユウ、だいすき」
ふぅわりと笑うアルマの顔が、何故か
幻覚で見た知らない女性の顔と重なって
「……」
「…ユウ?」
「おい、ユウの奴固まったぞ…どした」
「アルマの告白に度肝でも抜かれたんじゃ…」
「そういうタマっスか? あの子鬼が」
「大丈夫? ユウ、ねぇ」
心配そうに覗き込んでくるアルマの顔。
間近で重なる瞳にはっとする。
「うぜぇ!!!」
「あだぁ!」
「あ。いつものユウに戻った」
「よかったいつものユウだな」
ごつん!とアルマの頭に落ちる本日二度目の拳。
両手で後頭部を押さえて蹲るアルマに、ユウは一歩先に駆け出した。