第11章 ◆12/6Birthday(神田/セカンズ)
「たんじょうび?」
「そうだよ。12/6はアルマの誕生日なんだ」
壁に色とりどりの色紙で作った鎖のアーチを飾り付けていく研究員のエドガーを見上げながら、ユウは眉を潜めた。
『ぼくの、たんじょうびもあるんだ』
つい先日、照れの混じる顔でそわそわとアルマが告げてきたこと。
それはどうやら本当のことだったらしい。
『ユウも一緒にお祝い、してくれる?』
"誕生日"などというものは、ユウの知識の中にはなかった。
だから照れた顔で乞うたアルマの願いも一蹴した。
なんだそれは、と。
一生懸命説明してくる言葉も大して聞かずに流したが、どうやらアルマの誕生日というものは周囲にとって当たり前の祝い事らしい。
「ユウと同じに、胎中室で目覚めた日。お祝いの日だよ」
「……」
本日はその記念すべき日らしく、辛いイノセンス適性実験もないまま研究員達によって部屋は鮮やかな装飾で飾り付けられていた。
しかしにこにこと笑って応えるエドガーに相反して、ユウの眉間の皺は深く刻まれていく。
(何がお祝いだ)
目覚めたくて目覚めた訳ではない。
何が悲しくて、毎日血を見る実験を繰り返し体に刻んで、時には死を感じなければならないのか。
何度も体を引き千切られ、死を迎えてボロボロになった体を引き摺りながら、寒い胎中室の隅で何度再び眠りに落ちてしまえたら、と思ったことか。
ユウにとって第二使徒としての生は、微塵も喜ばしいことではなかった。
「だから一緒にお祝いしてあげようね」
「………いやだ」
「え?」
「祝いたいならエドガー達だけで祝えばいいだろ。俺は嫌だ!」
「あっユウ!?」
吐き出すように悪態をついて、エドガーの言葉も待たずにユウはその場から逃げ出した。
誰が祝ってやるものか。