第11章 ◆12/6Birthday(神田/セカンズ)
世界の何をも知らなかった、御戸代での生活
其処で命を授けられたのは、たった二人だけだった
「わぁ~! 見てユウ! 息がまっしろだよ!」
「さっぶ! んだよコレ…!」
「ぶしゅんッ! ズビ…多分"フユ"ってやつだだだだ」
「ああ? ダレだよよよ」
「外の世界にはフユってやつがいて、そいつがさぶくするんだって」
「迷惑なヤローだな…ッ」
身も凍るような寒さが突き刺さる早朝。
胎中室に向かった10歳程の少年──アルマとユウを襲ったのは、師走の洗礼。
第二使徒として生まれて初めて実感する"冬"という季節に、ガチガチと歯を震わせてユウは身を縮ませた。
「でもね、ユキってものを作り出せるんだよっ」
「ユキ? なんだそれ、食いもんか」
「えっとぉ…キラキラしてて、すぐ消えちゃうものなんだって。エドガー博士が教えてくれたんだ」
「ふーん…すぐ消えんのに作り出す意味あんのか。フユってのは変な奴だな」
弾むアルマの声に対して、ユウは興味なさげに呟くばかり。
「だねー。でも…見てみたいなぁ」
「そうか?」
「うん。いつか見てみたいなぁ…ユウと一緒に」
分厚く暗い天井を見上げて呟くアルマに、肩を竦めながらユウは余所を向いた。
ユウに比べ感情表現の豊かなアルマは、相手への好意も真っ直ぐなものだ。
そんな率直な気持ちを言葉にされると、なんとも気恥ずかしくなる。