第10章 ※◆with はち様(神田)
身近な誰か、と神田に言われ、真っ先に思い浮かんだのは迷い無くリヴァイだった。
思いを込めるように、ウリエは細く白い指先に優しく力をこめる。
「私が暖めたい人は、リヴァイさんです」
「………」
取り止めの無い話は続いているのか。
なんの話だと目で問えば、ウリエは微笑み返すだけ。
色々気になることは山積みだったが、仕方ないとリヴァイは諦めて息をついた。
「なら帰って茶に付き合え」
「はい!温かい紅茶を淹れますね」
返事一つで頷くウリエに、満たされる感情。
引き締まったままだった口元を、リヴァイはふと和らげた。
「それで、この手の傷は?」
「これは、空に丸い変なものが浮かんでいたのを見つけて─」
「……わかった話は帰ってしろ。手当てが先だ」
「はい」
「それと、」
「?」
「その手袋は没収する」
「あ」
ただ一つ。
誰のものともわからない男物の防寒具を身に付けることは、良しとはしなかったが。
*胡蝶は石に花咲く夢を見る*
(巡る巡る廻る)
(あなたの熱 繋ぐは世界)